公演こぼれ話

『レグルスのガラスの翼』の時のはなし、
この公演もなかなかに「着替え」が多くありました。
どの公演でも、着替えるといっても
たいてい、一回、二回くらいなもので、
僕はあの時、四着。
多い人は六着くらいの衣裳パターンがあったと思う。
準備が大変とはいえ、ゆっくり着替えられるのならよい。
狭い袖中で女の子が視線を気にしながら着替えているのもどうでもいい気がしてきた。
だから多いのは別に構わないのだが、
困ったのは、
かなりシビアな「はや替え」ポイントがいくつもあった事だ。
漢字をあてるなら「早」より「速」だと僕は思う。
公演をご覧いただいた人にはわかると思うが、
冒頭の、人が入り乱れるダンスシーンでの事、
凄い転換の速さのなか、実は何役もキャラクターを入れ換えていた。
たいていの役を「群衆」とし、衣裳を統一したので幾分か着替えの回数を減らした。
それでも各人一回ずつくらいは速替えがあった。
僕である。
最初は一応「傅役(もりやく)」という、王を補佐する目役という役が与えられ、衣裳もあった。
傅役として舞台からいなくなり、
今度は群衆として再び舞台上へ登場する間に速替えがある。
僕の場合、
・小道具(剣、人形)を置く
・手袋を脱ぐ
・靴を脱いで裸足になる
・首の帯を腰に巻き直す
・裾を外に出す
という行程を経て舞台へ向かう。
その間、3秒である。
当然、最初は出来なかった。
小道具は投げた。
帯は挟みつけた。
手袋と靴は半脱げの状態で冒頭を演じた。
裾はシャツINの日もあった。
なにがなにやら勢いで着替え、衣服が散乱し、他の人の通行の邪魔になって怒られた。
僕の量でこんなだったのだから他の人はどれだけであったのだろう。
のっけからスリル満点のお芝居であった。
その楽しさが怪我の巧妙で伝わっていたら幸いである。
ちなみに写真は僕が役の参考にした彼。
剥製とはいえ本物はかっこいい。